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テレワークで生産性が上がらない理由

テレワークで生産性が上がらない理由

目次

はじめに

 新型コロナウィルス(以下、新型コロナ)対策の一環として、オフィス内での密を避けるという目的でテレワークといったオフィス以外でも業務が可能となるような新しい働き方を導入した企業は多いのではないでしょうか。
 当社も、2020年4月に発令された緊急事態宣言の対策としてテレワークを導入しており、2021年7月現在も全社員の三分の一から半数が流動的にテレワークを実施をしています。
 テレワークを導入した際に話題となるのが、今回のテーマでもある「生産性」です。インターネットなどで「テレワーク」「生産性」というキーワードで検索すると、テレワークの導入で生産性が下がった、または下がるというレポートを見かけます。
 テレワークを導入して1年が経過した状況を、当社代表に聞いてみたところ「生産性の低下は無い」との回答が戻ってきました。個人的な主観ですが、1プレイヤーである私も自身の業務において「生産性の低下は無い」と分析をしています。
 インターネット上にある情報と、当社の回答、この違いは何なのか、本コラムでは「テレワーク」と「生産性」というキーワードで「テレワークの導入で生産性が低下したという」他社との違いについて分析をしてみたいと思います。

第一章 テレワーク導入の現状

 パーソル総合研究所によると、新型コロナ感染拡大の勢いが続いていた時期ではありますが、正社員のテレワーク実施率は全国平均で24.7%となっていました。(調査期間は、2020年11月18日から11月23日)
 2020年5月25日の全国の緊急事態宣言解除直後は、25.7%となっており、1ポイント減少しています。
 記事を執筆中の現在(2021年7月)では、テレワークをやめてしまっている企業も増えてきていると聞いています。では、「何故テレワークをやめてしまったのか?」という問いへの回答の一つは「生産性」であると考えられます。

テレワーク導入の現状

パーソル総合研究所「第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」より

第二章 テレワークツールの重要性

 緊急事態宣言が発令されてから応急処置的な対応としてテレワークを導入した企業と、それ以前から働き方改革の一環として取り組んできていた企業との差が生産性に影響を及ぼしていることはデータからも明らかです(詳細は後述)。
 冒頭で述べたとおり、当社のケースでは生産性は低下していないと代表は分析をしているがそれはなぜか。当社の場合は、新型コロナ以前から自社開発のプロダクトに、働き方改革の一貫として遠隔からリモートアクセスが可能となる機能実装を行っており、そもそもテレワークをするためのツールが手元にあった(しかも自社で使いやすいように設計された製品として)ことは大きなアドバンテージであったと考えられます。
 このため、緊急事態宣言が発令されてから当社のテレワークが開始されるまでに、さほど時間は掛からなかったと思います。もちろんツールだけあればテレワークが開始できるわけではないので、労務や業務ツールに関する見直しなどを行ってテレワークが開始されたわけですが(当社のケースでは勤怠管理、オフィススイート、チャットツールなどのクラウドサービスを導入)、自社商材とはいえ、テレワークツールを自前で持っていたことが、テレワーク導入の障害になりづらかったことは間違いないでしょう。

第三章 テレワークセキュリティガイドライン

 総務省はテレワークを導入するにあたり、ガイドラインを公開しています。(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/cybersecurity/telework/
 闇雲にテレワークを導入することを目的にするのではなく、テレワークの導入で、自社ではどのような業務の実現を目指すかという指針になる資料なので一読することをお勧めします。ガイドラインを読み解く際には、ICT担当者だけではなく、若手、ベテランの社員にも参加してもらい、意見交換をすることで、自社に適したテレワークのあり方が見つけられるでしょう。

テレワークセキュリティガイドライン

総務省「テレワークセキュリティガイドライン第5版」テレワーク方式の選定より

 参考までに、当社の採用したテレワーク方式は、ガイドラインの「②リモートデスクトップ方式」を採用しています。
 オフィスと可能な限り同じ環境が提供されることで、オフィス外での環境依存を無くすことを考慮し、当社のテレワークツールでは画面転送型リモートデスクトップを採用しました。
 画面転送型のリモートデスクトップ方式の採用により、オフィスにあるPCの操作を自宅や出先から行うことができる(社内に保存されている各種データといった資産へのアクセスも可能)ことと、通信環境問題による操作感のもたつきなども考慮した開発を行っています。もちろんセキュリティ面においても、ハードウェアトークンによる二要素認証や、デジタル証明書など二重三重のセキュリティを施してある上に、使用者に負担をかけないよう操作方法にも考慮した作りになっていることから、使用時のストレスを感じることはないことも開発の段階から考慮していたポイントです。
 また、画面転送型であることから、接続先のPCからファイルやデータをコピーすることは出来ないため、情報持ち出し対策をしっかり行っていることも重要なポイントです。
 このようにテレワークツールを選択する際は、自社でどのような利用形態が適しているのか、使用者への負担はないかといった具体的な使い方を考慮して選定することが重要です。

第四章 新型コロナ収束後のテレワーク継続

 新型コロナウィルスのワクチン接種も進んできており、いずれは従来の働き方に戻るのでしょうか?
 以下の資料は、新型コロナ収束後のテレワーク継続希望のアンケート結果です。

 

新型コロナ収束後のテレワーク継続

パーソル総合研究所「第四回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」より

アンケートの結果から、テレワークを長く続けた結果「続けたい」「やや続けたい」といった回答が性別・年齢を問わず約8割という結果が確認されました。

 では、企業側の考え方としてはどうでしょうか?というアンケートの結果も出ており、2020年5月25日の第1回目の緊急事態宣言解除後の在宅勤務の状況について「解除前と変わらない」との回答では、新型コロナ前から在宅勤務を行っていた人が86.3%であるのに対し、新型コロナ後に開始した人は 31.2%ということで、新型コロナ対策以前からテレワークに取り組んだ企業との差が約3倍との結果でした。

新型コロナ収束後のテレワーク継続

パーソル総合研究所 HITO Report SPECIALIST INTERVIEW 一橋大学 経済研究所 教授 森川 正之氏の記事より抜粋

 今度は、テレワークの継続希望状況を、新型コロナ対策前後で取り組んだそれぞれのケースで、テレワーク継続希望がどうなっているのかを見てみましょう。
 新型コロナ終息後に 「同じ頻度で在宅勤務をしたい」 とする人は、新型コロナ前実施では84.0%、新型コロナ後実施では 33.1%と、企業の思いと同じく3倍近い差がありました。このことから、新型コロナ対策として絆創膏のように暫定的にテレワークに取り組んだ企業と、働き方改革を目的として取り組んできていた企業の差が明確に出ていることが分かります。

新型コロナ収束後のテレワーク継続

パーソル総合研究所 HITO Report SPECIALIST INTERVIEW 一橋大学 経済研究所 教授 森川 正之氏の記事より抜粋

 ただ、 この結果に 「 (新型コロナ時よりも頻度は)少ないほうがよいが在宅勤務をしたい」という回答も加えて、今後も在宅勤務の継続を望む人の割合を比較すると、新型コロナ前実施で94.0%、新型コロナ後実施が 72.7%と、かなり接近した結果になります。
 このことから、テレワークの導入時期によって在宅勤務に対する温度差はあるものの、在宅勤務そのものに対する一定のメリットは多くの勤務者が認めていることが分かるでしょう。

新型コロナ収束後のテレワーク継続

パーソル総合研究所 HITO Report SPECIALIST INTERVIEW 一橋大学 経済研究所 教授 森川 正之氏の記事より抜粋

第五章 生産性を低くする/高くする要因

 ではなぜこのようにテレワークの導入時期により、生産性に差が出るのでしょうか。ここで押さえておきたいのが、生産性を低下させる要因です。

新型コロナ収束後のテレワーク継続

森川正之(2020)「コロナ危機下の在宅勤務の生産性:就労者へのサーベイによる分析」RIETI Discussion Paper, 20-J-034.

上図の調査結果から、テレワークによる生産性の低下となる原因は

  1. 職場のように対面での素早い情報交換ができない
  2. PC、通信回線など自宅の設備が社内より劣る
  3. 法令や社内ルールによって、自宅ではできない仕事がある
  4. 自宅では家族がいて仕事に専念できない

といった回答が上位を占めています。
 このことから、仕事の内容と環境の2つの要因がテレワークによる生産性の低下に影響していると考えられます。新型コロナ前からテレワークに取り組んできた人(企業)には、新型コロナ対策で、いきなりテレワークを始めた人よりも、アドバンテージがあるのではないかと想定されます。

 また、新型コロナ以前からテレワークを行っていた人の多くがデスクワークのみの業務で、必ずしも対面業務を必要としないなど、在宅でも生産性が左右されづらい仕事内容であったということ、高速インターネット回線が既に敷設されているなど、自宅のテレワーク環境がすでに整っていたということが想定されます。
 そして、新型コロナ対策として緊急避難的にテレワークを始めた人には、通信環境や仕事部屋の確保など、テレワークをする環境が自宅に整っていなかったり、いきなり在宅での業務に戸惑いがあったのではないかと考えられます。
 そもそも、職場でなければ行えない業務があるにも関わらず、在宅勤務を余儀なくされた人もいるかもしれません。こうしたことが、テレワークの導入時期によって生産性に大きな差が生じた理由ではないかと考えられます。

結論:テレワーク = 生産性の低下という結論づけは、まだ早い!

 テレワークには様々なメリットがあります。前述のデータにもあった通り、テレワークに取り組んだ80%近い人がテレワークの継続利用を希望しており、テレワークは新しい働き方として認知されつつあります。
 新型コロナのワクチンが普及した後も、企業は継続的にテレワークに対する方針・社内の制度・施策を検討していく必要があるのではないでしょうか。

 本コラムでは、テレワークと生産性について、数値化したデータを参考資料として紹介していますが、この数値がすべての結果ではないということはご理解ください。自社でテレワークを検討する際は、主観的・客観的なそれぞれの分析が重要です。また、企業の取組として従業員の働きやすさや環境を提供するという大きな視点で見た場合、テレワークは「選択肢のひとつである」ということを理解して取り組む必要があると考えます。

 ICTツールだけでは解決することのできない課題は多くありますが、当社は自社プロダクトの「Yubi Plus」を使うことで、オフィスにある自PCへのセキュリティ面も考慮したリモートアクセスで、テレワークの課題の一部は解決できました。

 新型コロナという国難から、新しい働き方の一つとしてテレワークを安心安全に実装するご支援が出来れば幸いです。